SSII2011  第17回 画像センシングシンポジウムSSII2011  第17回 画像センシングシンポジウム

デジタル新時代 画像センシング技術の新たな飛翔会期:2011.6/8(水)→10(金)会場:パシフィコ横浜アネックスホール

特別企画

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OS1
次世代生産システムの可能性を探る
[オーガナイザー]
 奥田 晴久(三菱電機)

[講演者]
 大道 武生(名城大学)
 塚田 敏彦(豊田中研)
 山田 陽滋(名古屋大学)

 昨今の急激な円高、主要マーケットの変化を背景として、生産現場の海外移行が再び進む中で、 国内におけるものづくりは変革期に立たされています。こうした中、本オーガナイズドセッション では、次世代生産システムを形作るセンシング技術、ロボット活用技術のあり方について展望いた します。今回は、生産システムへの造詣の深い著名な講師の方々から、次世代工場における搬送シ ステム、自動車生産工程における高精度3次元センシング技術の事例紹介と将来展望、人と共存す るロボットのための安全ビジョンに関する技術動向をご紹介していただき、今後の我が国が進むべ き生産形態のあり方と必要となるセンシング技術について再考するための機会となることを期待し ております。

「センサーエラーを考慮した高信頼自律搬送システム」

大道 武生(名城大学)
 製造システムにおける自律搬送の取り組みは、長い歴史があります。しかし、実用シス テムの多くが何らかのライントレース手法を用いています。その主要因は、センサーエラ ーに対する信頼性の確保が実現していないことによります。この問題を解決するには、個 々のセンサーの信頼性を上げるだけなく、搬送システムの信頼性を確保するシステムアー キテクチャーが必要になります。すなわち、多重化、階層化、そして、センサーエラーに 対応した制御手法の体系的構築が必要になります。そして、最悪の状況が発生しても、そ の影響が全体に及ばない分散性が最も重要です。これらに対応可能な、アーキテクチャー と信頼性の実現手法について紹介します。

「自動車生産工程における新たなセンシング技術」

塚田 敏彦(豊田中研)
 自動車の生産工程では様々なセンシング技術が必要とされます。我々はこれまでに、明 るさが変動する環境に対応するためのダイナミックレンジが広いセンシング技術や、対象 の3次元位置を精度良く計測するためのセンシング技術の開発を行ってきました。
 本講演では、部品を位置決めするために用いられる丸穴を対象として、搬送中の部品を 選別するためにダイナミックレンジが広くかつ高速シャッターを備えた2次元のセンシン グ技術、また、完成車建付けを検査するための3次元位置のセンシング技術等を紹介しま す。そして、これらのセンシング技術を用いた計測の蓄積により期待される次世代生産シ ステムの展望について紹介します。

「次世代ロボットのための安全ビジョン」

山田 陽滋(名古屋大学)
 人間とロボットの共存は、次世代生産システムに新たな可能性を与え、その生産性の向 上をもたらします。従来、ロボットを隔離する目的で敷設した安全柵のために生じていた 空間的・時間的な無駄を低減し、あるいは単純な繰り返し作業から作業者を開放するとい った期待がもたれます。本講演では、ライトカーテンに代わる、人間共存型次世代ロボッ トのための安全ビジョンをテーマとして、これに課される技術要件およびその事例を紹介 します。具体的には、安全ビジョンに関する国際安全規格を紹介し、その安全要求事項を 学術的な画像処理技術動向の中で位置づけるとともに、USV(Ubiquitous Stereo Vision) を用いた安全ビジョンの例等を示します。

OS2
光学センシングの新展開
[オーガナイザー]
 向川 康博(大阪大学)

[講演者]
 向川 康博(大阪大学)
 長原 一(九州大学)
 平林 晃(山口大学)

 以前のNTSC方式のアナログカメラを用いて画像解析していた時代と比べると、最近のデジタル カメラは解像度・階調・S/N比などの性能が大幅に向上しました。カメラの性能向上が一段落した 今、カメラありき、画像ありきで解析するのではなく、光学センサやセンシング手法そのものを もう一度見直し、光学センシング技術のさらなる新展開を模索することが重要となってきました。 本セッションでは、この新しい光学センシングについて、(1)光学系の工夫、(2)撮影過程の工夫、 (3)信号処理の工夫、の3つの観点から最先端の技術を紹介するとともに、今後の展開を考えます。

「カメラとオプティクスの組合せによる多機能センシング」

向川 康博(大阪大学)
 カメラに鏡などのオプティクスを組み合わせることで、カメラ単体では計測できない 様々な情報を得ることができます。例えば、光路を自在に変化させるための平面鏡・凸 面鏡・凹面鏡、空間的に不均一な減衰率を与える液晶やDMD、さらに光の入射方向をも記 録できるピンホールアレイやレンズアレイなどを用いることで、カメラは2次元画像の 撮影装置ではなく、シーンを解析するための多機能センシングデバイスに変化します。 本講演では、講演者が実際に構築したデバイスの実例とともに、この多機能センシング の考え方を紹介します。

「符号化撮像の原理とその応用・実装」

長原 一(九州大学)
 現在までの一般的なカメラ光学では、レンズから入射した光を集光し、シーン中の物 体の像をいかにシャープな焦点像として得るかということに注力してきました。一方で、 最近、注目を浴びているコーディッドアパチャやウェーブフロントコーディングなどの 符号化撮像法では、撮像過程を工夫し、逆にいかに画像をぼかすかを考えることで、カ メラの性能を向上させたり、カメラ単体では撮影できない画像を得たりすることができ ます。本講演では、講演者が実際に行ってきた研究例も含めて、この符号化撮像の考え 方やその応用・実装例を紹介します。

「圧縮センシングの基礎と今後の展望」

平林 晃(山口大学)
 圧縮センシングは、従来の大量センシングと対局をなす新しいセンシング技術です。 例えばデジタル画像の撮影では、一旦は画素数10メガを超える画像を撮影しながら、 実際に保存されるデータは1メガ程度です。すなわち、画像表現に真に必要なデータは 全画像データの10%程度です。そこで、この程度の量のデータのみを取得しておき、 再構成結果は通常の圧縮と同程度の品質を実現しようとする技術が圧縮センシングです。 この技術をCTに応用すれば、人体の被爆量を低減することができます。そのために信号 や画像が満たすべき前提がスパース性、あるいは圧縮可能性です。本講演では、この前 提が成立しているときにL1ノルム等の最小化によってなぜ信号や画像を再構成できるの か、またこのためにセンシング系はどのような条件を満たす必要があるのか、などのポ イントを分かり易く解説します。更に、これまでの研究事例を紹介しながら、今後の応 用展開へのガイドラインを示します。

OS3
AR応用技術の将来展望
[オーガナイザー]
 北原 格(筑波大学)

[講演者]
 麻生 隆(キヤノン(株))
 宮下 勉((株)DNPデジタルコム)
 赤松 正行(情報科学芸術大学院大学)

 情報メディア産業のブレークスルーを生み出す可能性があると注目が集まる複合現実感技術に ついて、最先端技術(基礎研究)から産業界における応用事例、さらには、複合現実感によって 実現が期待される将来のメディア技術までを俯瞰的に紹介する。

「MRの実用化に向けたキヤノンの取り組み」

麻生 隆(キヤノン(株))
 MR(Mixed Reality:複合現実感)」とは、現実世界と仮想世界をリアルタイムに違和 感なく融合させる映像技術です。現実世界の情報の豊かさと仮想世界の柔軟性、それぞ れの長所を活かすことで、VR(Virtual Reality)より一歩進んだ映像世界を提供する 技術として注目を集めています。キヤノンが目指しているMR技術の特長は「利用者が自 分の視点で眺めながら仮想世界と現実世界をインタラクティブに、実寸大に体験できる」 ことです。キヤノンでは1997年からMRのキーワードのもと、要素技術の研究と・アプリ ケーションの開発を行ってきました。特に2008年からは、設計・製造分野における活用 に向けた検討を進めています。 本講演では、MR技術の紹介と、設計・製造分野での実 利用化に向けた我々の取り組みを紹介いたします。

「DNPにおけるAR技術の応用事例と将来展望」

宮下 勉((株)DNPデジタルコム)
 光学系AR技術は、印刷物に新しい機能や付加価値を加えることができる親和性の高い 技術だと考えています。私たちは、特に印刷物などに対して近接で実施するAR技術にお いて、学習、ナビゲーションや販売促進のためのプロモーション利用をテーマに、ソリ ューション開発に取り組んでいます。今回は、美術館等での作品鑑賞の利用評価などを 含め、スマートフォンを利用したARアプリケーションのログ分析などをご紹介しながら、 ARコンテンツ開発におけるポイントや導入事例、将来への取り組みなどをご紹介します。

「見えないものを見るために」

赤松 正行(情報科学芸術大学院大学)
 太古よりアートはテクノロジーとともに領域を拡げ、欲望を現実化してきました。そ れは近代以降、特にデジタル・メディアの時代にあっては、ますます高度になる一方で、 しばしば分断しているのかもしれません。ここでは、いくつかのアート作品を紹介し、 そこに求められたテクノロジーを考察するとともに、アートからテクノロジーへのラブ・ コールを行なわせていただきたいと考えています。これには、顔面特徴点による映像作品 「Ocean」、身体動作による舞踏作品「Earthen Bodied Augur」、ジオ情報とARによるソー シャル・システム「セカイカメラ」、などが含まれます。